第3章
授業改善の軌跡
【DoT:ドゥT】



(1) 校区指導案フォームの改訂

昨年度、『いまとみらい科』の成果を教科授業に活かす授業改善の研究の中で、校区の主張をより明確に表現するための手立てとして指導案フォームを作成した。今年度、その研究を整理する過程で再度指導案フォームを整理し、改訂した。
 大きな変更点としては、【本時について】で、昨年度はめあて→主発問→めざす子どもの姿としていたものをめあて→問いとし、めざす子どもの姿は本時の学習計画の最後に示すこととした。今後も、さらに指導案フォームの改訂を続けていく。現状の校区の指導案フォームは以下の通りである。

校区指導案フォーム





(2) 校区研究授業

これまで校区ではいまとみらい科の研究、授業改善の研究を進める中で、3校で研究授業を行い、その研究内容を深め合う研究協議を大切にしてきた。今年度も「主体的な学び」を引き出す授業改善を進めるに当たり、小中で研究授業を行い、成果と課題を出し合い、研究を深め合う場として大切にしてきた。


6月20日第四中学校研究授業

今年度第1回の校区研究授業は、横浜国立大学の木教授を迎えて第四中学校9年生で実施した。数学・英語・理科において、言語活動の充実を意識し、ソロT-コミ-ソロUを取り入れて指導案を作成した。それぞれの問いに対し、前向きに向き合う子どもたちの姿が見られた。

理科の指導案では、「学びの倉庫」に高校の範囲までを記述し、本時の授業についてのこれまでの学びと今後の学びをより深くつなげるチャレンジが見られた。

四中9年理科指導案より

【単元名】  水溶液とイオン

◆本単元に関連する学習内容






また、『解きたくなる問い』にこだわった授業づくりを行った。数学科においては、鳴門教育大学の金児准教授にご指導いただく中、より子どもたちに多様な答えを引き出す「問い」について最後までこだわり、答えが1つのものではなく、より答えが多様で、子どもたちの考えや発想を広げる「問い」が「主体的な学び」につながることが確認できた。




四中9年数学科指導案より

【単元名】 平方根

【本時について】

◆めあて
【平方根が現実の社会でどのように使われているかを知ることで、どれほど有用なものかに気づき、さらに学んでいこうとする姿勢を持つ】


当初設定していた問い
【B5版の用紙に書いた原稿をB4版の用紙に拡大コピーしたい。倍率は何%にすればいいですか?】
変更後の問い
【半端な大きさの用紙からA6サイズのカードをつくるにはどうすればいいだろうか。
ただし、次の条件を守ること。
@ A6サイズの縦と横の比は、1:√2である。
A 短いほうの辺の長さは105oである。
B コンパスと定規だけを使って作図すること。】

◆木教授(横浜国立大学)の指導◆
言語活動を何のためにするのかを忘れてはならない。言語活動のための言語活動であってはならない。全国の各調査からも、校区の子どもたちの実態からも、思考力・判断力・表現力に課題が見られる。その思考力・判断力・表現力を高めるものが言語活動の充実である。
まず大切なことは、この校区でソロTと言われているひとり学びの時間である。この時間に子どもたちがじっくりと発問に対する答えをまとめる必要がある。そのことが、そのあとの展開に非常に重要になる。教職員は机間指導をする中でどの意見を中心に組み立てていけばいいかを見極める必要がある。
コミュニケーションの時間では、子どもたちが自分の意見を自分で説明することが重要である。教職員が子どもの意見を復唱していないか。教職員が子どもの意見を復唱してしまうと、子どもは説明する意欲を失う。そうではなく、子どもの言葉できちんと最後まで説明させることが表現する力を養うことにつながる。そのときのキーワードとなるのが「どうする?どうして?なぜ?わけは?だから?どうしたい?どういうこと?」。これだけで授業を組み立てることもできる。子どもに問いかけることをぜひとも大事にしていただきたい。
この校区では、小中の接続がうまく進んでいるように思える。中学校側に子どもの視点に立った授業のあり方がうかがえる。これまでの財産を大切にしながら、子どもたちの思考力・判断力・表現力を高める授業改善を進めていただきたい。




8月28日赤大路小学校研究授業

第2回研究授業は夏休みが明けてすぐに、大阪教育大学の住田准教授を迎えて赤大路小6年生で行った。国語科の説明文において、6月20日の研究授業での学びをいかして文の構成に気づかせるための問いを設定し、それぞれの意見を高め合う姿が見られた。子どもたちは問いに対して自分の意見をはっきりさせながら、ペア交流・グループ交流・全体交流を通してさらに考えを深めていった。さまざまな形態のコミュニケーションタイムのあり方とその効果を授業者が理解し、学習活動によって使い分ける重要性を確認することができた。

赤大路小6年国語科指導案より

【単元名】  感情 生き物はつながりの中に

◆めあて
【対話したことをもとに、自分の考えをもち、自分の言葉で伝える】


◆問い
【「でも」の前後の文では、どちらに共感できますか?】

◆本時の学習計画◆
・ペア交流をする。 → 友だちと交流することで色々な考えを知ったり自分の考えを深めたりする。
・自分の考えをグループで交流する。 → ワークシートを使うことで自分の考えを整理しやすいようにする。
・グループ交流を経た自分の考えを全体に伝える。 → 交流することで自分の考えがどう深まったか、どう影響されたかについて意識させる。



授業のあとに行った3校での研究協議では、問いを解くために『学びの倉庫』に何を入れておくべきであったか、多様な意見を引き出す問いであったかなど、授業改善の3つの柱に基づいて活発に意見が出され、授業改善を一歩進める機会となった。

◆住田准教授(大阪教育大学)の指導◆
この校区では、小中という大きな研究基盤のもとでダイナミックに授業改善の研究を展開している。この体制を評価するとともに、だからこそしっかりと成果を出していってほしい。
国語科で大切にしたいことは、子どもたちに「言語を分析する力」をつけることである。子どもたちが主体的に学ぶためには「一緒に考え合う仲間がいること」と「学び方・ツールをもっていること」である。国語の授業では、「ただ何となくでも話が読める」という利点と欠点があった。しかし、文章の中には筆者が伝えたいことを伝えるためにさまざまな工夫がある。それを見つけ、「学びの倉庫」に入れることで自分が伝えたいことを伝えるときに活用することができるようになる。この校区で行われている『ソロ-コミ-ソロ』で言語に関するツールをさらに深く子どもたちに身につけさせるような授業をつくっていっていただきたい。




9月3日富田小学校研究授業

鳴門教育大学の金児准教授を迎えて富田小学校で行った第3回研究授業では、6年生の算数科の授業が公開された。これまでの研究授業の成果と課題をもとに、子どもたちにとって「解きたくなる問い」は何かをさらに追求した。「ならべ方と組み合わせ方」において、当初設定していた問いでは答えが決まっていて子どもたちの主体的な学びにつながらないと考え、より子どもたちの多様な考えを引き出すことのできる問いを追求した。課題設定を子どもたちに身近でリアリティのあるUSJでの出来事にし、考えることが苦手な子どもたちも真剣に問いに向き合う姿を引き出すことができた。また、3人グループでのコミュニケーションタイムでも、多様な考えに触れ、深め合うことができた。



富田小6年算数科指導案より

【単元名】 「ならべ方と組み合わせ方」

【本時について】

◆めあて
【「ならべ方」と「組み合わせ方」とのちがいに気がつく。】


当初設定していた問い
【5種類のアイスクリームの中から2種類を買います。何通りの組み合わせがあるでしょう?なぜ、そう考えたのか説明しましょう。】

変更後の問い
課題設定
○先生たちでUSJに行きました。たくさん遊び、残りは「ハリーポッター」「ジュラシックパーク」「スパイダーマン」「ターミネーター」「ジョーズ」の5つです。でも、時間があまりありません・・・最後に2つだけは乗ることができそうです。そこで何と何に乗るか、選ぶ2つについて話をしました。
A先生                    B先生
 10通りの選び方があるね。       20通りの選び方があるね。

【A先生はなぜ、10通りと考えたのか?B先生はなぜ、20通りと考えたのか?図や表をもとにして説明しましょう。】

◆金児准教授(鳴門教育大学)の指導◆
この間、授業の指導案を何度かやり取りする中で、富田小学校がチームとして指導案を練り上げ、子どもたちにとってより解きたくなる問いを設定することができた授業となった。そのことで、子どもたちが自分と仲間の力を使って必死に問いを解こうとする姿が見られた。そのことを評価したい。
 単元の中には、知識・技能を主に習得させる時間と、考え方を深める時間とが存在する。この校区の研究授業の場合、本時で子どもに考えさせる場面を設定するのであれば、単元を通しての見通しをしっかりと持っておく必要がある。つまり、この校区の『ソロ-コミ-ソロ』がより有効に機能する時間とふさわしくない時間があることを理解して組み立てる必要がある。
 昨年度よりこの校区では指導案に9年間の学びの系統性を記述するようになったが、これは非常に重要なことである。今の学びがこの先にどうつながっているのかを授業者が理解しておくことが、より子どもの学びを豊かにすることにつながる。小中が教科書を交流して学び合う機会をぜひとも今後も大切にし、活発に授業研究を進めていただきたい。



(3) 小中教科部会

昨年度、校区では小中教科部会を立ち上げ、校区の小中の教職員を教科ごとにわけて、「学ぶ意味=教科のS」を考えてきた。今年度、授業改善を推進する母体として、この小中教科部会を年間計画の中に設定し、授業改善の研究を推進する組織として位置づけた。
これまでに4回の小中教科部会を行ってきた。各教科でそれぞれが1つの授業を生み出し、その過程で小中の系統性や小中での指導法や系統性を整理することをめざした。そのスタートとなった5月23日の第1回小中教科部会では、今後研究授業を行う予定の教科では指導案の練り上げを、近いうちに研究授業の予定がない教科では授業者の確定と小中の引き継ぎにおける気になることを出し合った。7月25日に行った第2回小中教科部会では、8月と9月に研究授業を行う教科では指導案の練り上げを、それ以外では系統性の確認や今後の授業内容の確認をした。9月12日の第3回、10月17日の第4回では、11月13日の地域公開研をみすえての指導案の練り上げを中心に行った。国語科では、大阪教育大学の住田准教授にもご参加いただき、授業のポイントや指導内容の系統性などについてご指導いただいた。今後、各教科で今年度の成果と課題を出し合い、総括していく。

 


 
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