第3章
「主体的な学び」を
 引き出す授業づくり
【P:プラン】




1 「主体的な学び」を引き出す教科の授業づくり

 昨年度より高槻市教育センターの授業改善推進モデル校区の委嘱を受け、これまでの研究をいかし、校区一貫した授業づくりを進めてきた。その中で、「主体的な学び」というキーワードに出会った。なぜ、「主体的な学び」なのか。それは、本校区の研究が、学びの空洞を埋めることをめざしているからに他ならない。学ぶ意味を感じることができず、学んだ事をいかせない。そんな校区の子どもたちの課題を解決するためには、「主体的な学び」を引き出すことが最も重要となる。今年度は、その「主体的な学び」を具体的にイメージすることからスタートした。校区が考える「主体的な学び」の具体的な姿は、以下の4つである。

○学ぶ喜びを感じる

○学ぶ意味を理解する

○学びを自分の生活に活かす

○自分から働きかけることができる


 これらは校区がこれまで「いまとみらい科」でめざし、育もうとした社会参画力と重なるものである。これらを日々の授業の中で意識し、教職員自身がSを強く持つことで、「主体的な学び」は引き出されると考える。

「次もやってみたい」  「今日の授業、めっちゃ考えた」
「あぁ、そっかぁ。なるほど」 「その視点もあったのか」
「考えるのが楽しかった」 「勉強したことを伝えたい!」


 こんな、子どもたちの声を大切にしていきたい。そのような授業を校区で一貫してつくることにより、子どもたちの「主体的な学び」を引き出したいと考える。

 これまでの研究の結果として、子どもたちの成長と課題を実感している。校区の子どもたちの「主体的な学び」を引き出すためには、教職員自身が授業をきちんと設計する必要がある。子どもたちに超えさせるべきハードルを正しく設定し、授業の質を高め、子どもたちに確かな学びを保障することが大切である。毎日の授業の積み重ねの中でこそ、めざす「主体的な学び」は育まれていく。

 昨年度、「主体的な学び」を引き出す授業づくりの柱を『解きたくなる問い』『学びの倉庫』『ソロ−コミ−ソロ』の3つに整理した。今年度もその3つを大切にしながら、それぞれの内容を深めてきた。


(1) 「主体的な学び」を引き出すための『解きたくなる問い』

 『解きたくなる問い』とは何か。どのようにすれば『解きたくなる問い』を設定できるのか。日々の授業や研究授業をくり返しながら、『解きたくなる問い』への問いに向き合ってきた。

 「いまとみらい科」で求めてきたリアリティを教科授業の中でも追求することは、学びの空洞を埋める上で大切なことである。これまで、研究授業を通してリアリティを求める問いの設定にこだわってきたこともあった。しかし、すべての教科授業でそれを追求することは難しいことに直面した。また、リアリティを追求するあまり、授業でつけたい力から離れてしまうこともあった。

 「いまとみらい科」でリアリティを追求してきたのは、学びを自分ごととするためである。同じように、教科授業の中で学びを自分ごとにするための手立てが、『解きたくなる問い』である。『解きたくなる問い』で最も大切なことは、その時間でつけたい力に迫ることである。つけたい力に直結する『解きたくなる問い』が設定されることで、子どもたちにとって学びは自分ごととなり、「主体的な学び」を引き出すことにつながる。

 つけたい力とは何か。教科の授業である限り、その時間につけたい力は、学習指導要領に基づいたものでなければならない。その力を確実に育むために、子どもたちに何を考えさせ、どのようにして学びを確かなものにすることができるのかということに、授業者自身が向き合うことが大切である。そのためには、今の学びが単元のどのような位置づけにあるかを知り、どのような系統性の中に位置づけられているかを知っておくことが重要である。そこから、子どもに考えさせるべき学びの本質に迫る明確な意図を持った問いが設定される。このような問いを授業の中で日々積み重ねることが、子どもたちが自ら問いを立てて解く力につながり、「主体的な学び」を引き出すことにつながるのである。

『解きたくなる問い』の設定で大切にすること

○つけたい力に迫ること

○授業の中での学びの本質を見極めること

○単元の見通し、学習の系統性を確認すること

○問いの意図が明確であること



(2) 「主体的な学び」を引き出すための『学びの倉庫』

 『学びの倉庫』は、これまでに学んだ既習事項や経験を活かして問いを解くツールである。そして、新しく学んだことが『学びの倉庫』に入っていく。つまり、学びを活かすことと整理することを目的としている。

 これまでの研究の成果として、『学びの倉庫』を活用することが校区として定着してきた。ここで大切にしたのは、“つなぐ”という意識である。前述の『解きたくなる問い』と向き合うとき、子どもたちは『学びの倉庫』を活用し、これまでの学びと今の学びをつなげる。そして、問いを解いた今の学びを倉庫に入れることで、これからの学びとつなげることになる。つまり、『学びの倉庫』を活用することは、これまでの学びと今の学びをつなぎ、今の学びをこれからの学びにつなげることになるのである。このことは、学んだことを活かしきれず、学ぶ意味を見いだせなかった校区の子どもの課題を解決するためにとても重要なことであると考える。この学びをつなげる経験が、学びの空洞を埋め、「主体的な学び」につながる。

 これまで『学びの倉庫』には、おもに知識や経験を入れていくことを重視してきた。しかし、『解きたくなる問い』の研究を進めるにつれて、それと関連した『学びの倉庫』を考えると、最も大切なことは問いを解く考え方を入れることであると気付いた。子どもたちが今の問いと向き合ったとき、問いを解くために引き出すべきなのは、知識はもちろんであるが、これまでに問いを解いてきた考え方である。

「この問いは、あのときに解いた考え方で解けるかな」

「あのときの考え方は、この問いを解くのにも使えるかな」


 子どもたちがこのように考えることで、自ら問いを解く力が育まれていく。『学びの倉庫』には、『解きたくなる問い』を解く考え方や問いを解いた経験を蓄積していくことが必要なのである。



(3) 「主体的な学び」を引き出すための『ソロ−コミ−ソロ』

 『ソロ−コミ−ソロ』は長年校区が大切にしてきた学習形態である。校区では、長年の積み重ねの結果、この学び方が定着してきている。子どもたちはグループで学ぶことに抵抗を感じることなく、それを当然のようにできるようになってきている。これは、非常に大きな成果である。しかし、それに甘んじることなく、その質を高めていくことが求められている。

 ソロTでは、『解きたくなる問い』に対して、じっくりとその問いと向き合うことが大切である。そのときに、考える手立てとなるのが『学びの倉庫』である。これまでに学んだことや経験、そして何より問いを解く考え方を引き出し、問いに向かう。そのようにしてソロTで考えたことを、深め合い、高め合うことをめざすのがコミュニケーションタイムである。これまで、ちがう価値観に出会うことが重要であると考えてきたが、それよりも重要なのが、学びに対する納得を得ることである。授業の中でつけたい力に対して、ぶれることなく問いを解く考え方を集団で学ぶ。それがコミュニケーションタイムの意義である。コミュニケーションタイムには、ペア・グループ・全体などさまざまな形態が考えられる。それらを、より学びの納得につなげることを意識して効果的に活用することが求められる。ソロUでは、授業の中で学んだことを言語化することをめざしている。学びをふり返り、授業での学びを確かなものにするために、とても重要なことである。このソロUで一人ひとりの学びに返すことこそ、つけたい力が本当についているのかを確認することにつながる。

 今年度、日々の授業や研究授業などを通して研究を進める中、『ソロ−コミ−ソロ』で大切にしてきたことは、その形にこだわるのではなく、本来の目的に立ち返ることである。それは、すべての子どもの学びを保障することであり、考える力を高めることである。一人ひとりの学びには差があり、限界がある。『ソロ−コミ−ソロ』による協働的な学びは、その差をうめ、一人ひとりの学びをより深くすることができると考えている。また、「そんな考え方もあったのか」「そう考えるともっとわかりやすい」「自分の考えに自信が持てた」など、さまざまな考え方に出会うことで、自身の学びをさらに深めていくことにつながる。そのためには、質の高いコミュニケーションが求められる。そしてそれは、日々の授業設計をベースにした積み重ねによってつけられていくものである。だからこそ、私たちは、『ソロ−コミ−ソロ』の形だけではなく、そのことによって何が求められているのか、何のための『ソロ−コミ−ソロ』なのかを忘れず、日々の授業づくりを大切にしていきたい。

社会参画力の育成と3つの柱のイメージ図



(4) 社会参画力と3つの柱との関連

 校区が考える社会参画力は「矛盾や困難を乗り越えじりつして生きていく力」・「社会の中から課題をとらえ解決する力」・「人や社会に働きかける力」の3つである。これらを日々の授業で意識し、子どもたちに育むことをめざしている。3つの社会参画力と「主体的な学び」を引き出す授業づくりの3つの柱の関連を次のように考えている。



 「矛盾や困難を乗り越えじりつして生きていく力」は、『解きたくなる問い』との関連が深い。子どもたちは、社会に出るとさまざまな矛盾や困難に出会うことになる。その中でじりつして生きていくためには、自ら問いを立てて解いていく力が必要であると考える。社会の矛盾や困難の中から自分で課題を見つけ、それを解決していくことが、生きづらい社会を生き抜くために大切な力となる。そのために、子どもたちは学校、授業の中でさまざまな問いに出会い、解決していく経験をすることが求められる。私たちは、そのことを意識しながら、子どもたちに『解きたくなる問い』を解く経験を積み重ねさせることにより、社会で活かすことのできる自ら問いを立てて解く力を育んでいきたい。

 「社会の中から課題をとらえ解決する力」は、『学びの倉庫』との関連が深い。先に述べたように、子どもたちが社会に出たときに必要とされる自ら問いを立てて解く力を育むために、『解きたくなる問い』が必要である。校区は、その『解きたくなる問い』を解決するツールとして『学びの倉庫』の活用を意識している。それは、これまで学んだことを、出会った問いを解くために活用することである。そして、その問いを解いた考え方がまた『学びの倉庫』に追加されていく。この経験が、社会の中から課題をとらえて解決する力をつけることにつながると考える。『学びの倉庫』には、知識や技能だけではなく、問いを解く考え方や経験を入れていくことが大切である。

 「人や社会に働きかける力」は、『ソロ−コミ−ソロ』との関連が深い。子どもたちは、問いと出会ったときに、まず自分の考えを持つことから始まる。そこから、その考えを仲間とともに深め合い、確かめ合うためにコミュニケーションをおこなう。そして再び学びを確かなものにするために自分に返すことが必要である。社会の中で働きかける力は、その積み重ねの中で育まれるものである。人や社会に働きかけるには、自分の考えをしっかりと持ち、主張する力が求められる。そしてまた、働きかける中でコミュニケーションをとり、その考えはさらに確かなものになっていく。



2 生活科・総合的な学習の時間「いまとみらい」の充実

(1)ふり返る力・コミュニケーションスキルの育成

 社会参画力を育むことを目標としてきた生活科・総合的な学習の時間「いまとみらい」は、その成果を教科授業に活かし、また教科授業における授業改善で見出した成果を再び「いまとみらい」の充実に活かしている。授業改善の研究が進む中、校区が生み出した『S−RPDCA学習サイクル』は、単元の中での学び方や1時間の学習サイクルとして教科授業でも活用されている。サイクルの【R=リサーチ】は、単元や1時間の授業の中で学びのつながりを意識する「学びの倉庫」として位置づいている。また、サイクルの【CA=チェック・アクション】は、1時間の学びを確かなものにするために、ソロUで学びを言語化してふり返るサイクルとなっている。それらをくり返していくことを通して、教科授業で子どもたちにコミュニケーションスキルを育み、ふり返る力を育成することにつながっている。そして、教科授業の中で大切にしてきたことが、再び「いまとみらい」の中で活かされるプラスのサイクルを生み出している。子どもたちにコミュニケーションスキルやふり返る力がついていくことにより、「いまとみらい」でこれまではできなかったことにもチャレンジすることができ、解決する課題の深まりや単元の充実につながっていくと考えている。

(2)単元の広がりと深まり

 「いまとみらい」では、子どもたちに課題と自分との関係をしっかり見つめさせ、自分たちの実生活との関わりを大切にし、リアリティを追求して取り組みを進めてきた。毎年同じ単元を繰り返して行うのではなく、目の前の子どもたちの実態を見つめ、教職員が顔を合わせ、自分たちで単元を開発することに価値を見出している。
今年度は、単元の広がりと深まりを求めた。行おうとしている単元が、活動のための活動ではなく、子どもたちの課題を解決することにつながるものになっているのかを常に確認することを忘れてはならない。また、力をつけてきている子どもたちを前に、教職員が課題のハードルを下げてはいないかを意識することも大切である。学年の縦の系統性を意識するだけではなく、子どもの育ちを考えた単元の設定が必要となってきている。そのために、これまで広げてきた地域や社会とのつながりを、さらに子どもたちの学びにつなげていくことが大切である。
 
(3)1時間の学びの充実

 教科の授業改善を進める中で、『S-RPDCA学習サイクル』を1時間の教科授業に取り入れようと校区共通の指導案フォームを作成し、学びの中に活かすチャレンジを続けてきた。そのフォームに基づいて研究授業を積み重ねていくことにより、多くの学びを得ることができた。今年度、「いまとみらい」の時間の研究授業を実施するに当たり、この1時間のフォームに沿って指導案の作成をすることにした。これまで「いまとみらい」は単元としての設計を重視する傾向にあったが、このことにより、1時間の中での学びを見直し、充実させることにもつながると考えた。単元としての学びの充実とともに、1時間の学びの中での活動をより明確にすることで、子どもたちにつけたい力をより深く育むことにつながると考えている。



 
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