第4章
平成27年度の実践
【Do:ドゥ】




1 校区一貫した授業づくり

 校区では、毎年多くの教職員の入れ替わりがある。その中で、これまで大切にしてきたものを引き継ぎながら、課題を整理し、新しいシステムとサイクルを生み出していく必要がある。今年度は、これまでの積み重ねをいかし、子どもたちの「主体的な学び」を引き出す校区一貫した授業づくりに取り組んできた。

(1)校区指導案フォームの見直し

 今年度の研究をスタートするにあたり、同じベクトルでよりシンプルに授業づくりができるよう校区指導案フォームの再検討を行った。これまで研修を重ねてきた目標準拠評価についての記述をより明確にすることが大きなねらいである。今年度より、3【学習指導要領の記述】 4【単元の観点別評価規準】を追記した。また、7【単元のPDCA(単元計画と評価)】に単元の評価計画を詳細に記述することとした。単元を見通した評価の計画を立てることで、より具体的にめざす子どもの姿をイメージし、正確に評価したいとのねらいによるものである。また、本時の学習計画の縦列に【学習スタイル】の項目を設け、ソロ・ペア・グループなど多様な形態での学びを記述できるようにした。これは、昨年度までの研究から、コミュニケーションにはねらいに適した多様な学習スタイルがあることを学んだからである。そして、授業づくりの3つの柱を意識しながら、『ソロ−コミ−ソロ』の弾力的運用や揺さぶりの問いの設定など形だけにこだわらず、つけたい力、めざす子どもの姿に近づくためにどうすればいいかを授業者が判断して運用できることを大切にした。
 今年度の校区指導案フォームは以下の通りである。




昨年度、『いまとみらい科』の成果を教科授業に活かす授業改善の研究の中で、校区の主張をより明確に表現するための手立てとして指導案フォームを作成した。今年度、その研究を整理する過程で再度指導案フォームを整理し、改訂した。
 大きな変更点としては、【本時について】で、昨年度はめあて→主発問→めざす子どもの姿としていたものをめあて→問いとし、めざす子どもの姿は本時の学習計画の最後に示すこととした。今後も、さらに指導案フォームの改訂を続けていく。現状の校区の指導案フォームは以下の通りである。

校区指導案フォーム





(2)小中教科部会

 一昨年度、その教科をなぜ学ぶのかについて教職員が考え、深めるために「小中教科のS会議」を立ち上げた。昨年度は、小中の教職員がともに教科について学びを深める「小中教科部会」として実施した。それぞれの部会が1つの授業を生み出すこと、各教科の系統性を整理することを目的とした。しかし、授業づくりをねらいにしたことから、指導案の練り上げを中心に行った部会も多く、教科によって研究の深まりにばらつきがあった。
今年度は、小中教科部会報告会を7月に設定し、それまでにねらいを達成することをめざした。今年度のねらいは、以下の通りである。


●小中の段差を解消するために、各教科で領域をしぼって指導内容の系統性とつけたい力(学びの倉庫)を整理する

●昨年度の総括をもとに、教科ごとで研究したい内容をしぼって研究を進める

 ねらいをしぼったことにより、各部会でより活発に議論が行われることになった。部会によっては、次回までにそれぞれで宿題を持ち寄り、研究を積み重ねる部会もあった。

 7月27日に行われた小中教科部会報告会では、各教科にいまとみらい部会、養護部会を合わせた全11部会から研究の内容が報告された。どの部会からも充実した内容の報告があり、小中の段差解消につながる学びを共有する貴重な場となった。特徴的な2つの部会を紹介したい。

 社会科部会では、大きなテーマを「公民的資質」にしぼり、社会科の授業でつけたい力について報告された。そして、教科書をもとにした小中の人権教育につながる学習内容についても報告された。具体的な教科書の記述の紹介は、あらためて多くの教職員の学びとなった。

 また、図工・美術部会では、絵の具の使い方にスポットを当て、具体的な写真を交えて発達段階ごとの使い方の例や気をつけたいことなどが報告され、大きな学びとなった。

 今年度の教科部会は、ねらいをしぼって集中的に行うことで、新たな学びを得ることができた。しかし、小中連携して教科の学びを深めることはまだまだ研究の途上である。来年度に向けて、さらに研究内容を整理し、小中の段差解消に向けた取り組みを進め、授業づくりにつなげていく。


小中教科部会報告会コミュニケーションカードより

・ 中学校へ向けて小学校でどんな手だてが必要なのかということも勉強になりました。さまざまな教科が整理されて、それが共有できるというのは小中の連携の良さだと思いました。

・ 各教科で4月から行われた研究について非常によくわかりました。各学年でのつけたい力が校区で統一されたことで、それを意識して今後授業をつくっていこうと思います。


(3)校区研究授業

 研究の推進と子どもの姿を共有するため、校区では各校持ち回りで研究授業を行ってきた。今年度も、「主体的な学び」を引き出す授業づくりを校区一貫して進めるために、3校で研究授業を実施した。

6月24日 富田小学校研究授業

 2年生と5年生の算数の授業が公開された。『解きたくなる問い』にこだわって授業づくりを行った。それぞれ、子どもたちが学びたいと思える学習課題の設定をした。しかし、学びの本質に迫る場面で学習意欲を持続させることの難しさを感じる場面も見られた。

 研究協議では、一昨年より算数・数学の授業づくりに関わっていただいている鳴門教育大学の金児准教授から富田小学校の授業づくりに向かう姿勢を評価していただき、葛上准教授からはあらためて教科の授業を通して社会参画力を育むことの大切さを伝えていただいた。

7月8日 赤大路小学校研究授業

 2年生の国語の授業が公開された。ここでは、『学びの倉庫』にこだわり、問いに対して2年生の子どもたちがこれまで学んだことを活かして向き合う姿が見られた。参観した第四中学校の教員から、「2年生であそこまでコミしている様子に驚きました。中学校でコミが当たり前のようにできるのはこういう積み重ねがあるからだと実感しました。」との声が上がった。しかし、一人ひとりの学びを深め、すべての子どもの学びを保障するためのコミュニケーションの質については課題が見えた。今年度より、国語の授業づくりについてご指導いただいている鳴門教育大学の幾田准教授からは、国語における『解きたくなる問い』『学びの倉庫』のとらえについてご助言をいただいた。

9月2日 第四中学校研究授業

 9年生3クラスの授業が公開された。日々の授業改善とともに、さまざまな教科で校区の授業づくりの柱を意識した授業づくりを進めることをめざして、国語・社会・音楽での研究授業を実施した。

 どの授業でも、子どもたちが前向きに授業に向き合い、9年生の落ち着いた中でスムーズにコミュニケーションできる姿に、校区の取り組みの積み重ねの成果とその大切さを確認する機会にもなった。鳴門教育大学の葛上准教授から、一つひとつの授業についての助言をいただきながら、子どもたちの力をさらにのばしていくために、授業者が適切なハードル設定をし、授業設計をしていくことが求められるとのご助言をいただいた。


(4)提案授業部会

 昨年度の小中教科部会では、指導案の練り上げを中心に行った部会があった。その部会では、教科の系統性についての研究を深めるには至らなかったが、小中の教職員でさまざまな視点から1つの授業をつくりあげていく大切さを学ぶことができた。その経験から、今年度は地域公開研究発表会で行う授業を校区の全教職員でつくりあげる提案授業とし、その授業内容を検討する場として「提案授業部会」を設けた。地域公開研究発表会で公開する5年生国語・算数、6年生「いまとみらい」、7年生理科、8年生保健体育、9年生「いまとみらい」に校区の教職員がわかれ、一人ひとりがその授業を自分の授業であるととらえて議論することを目的とした。小中の教職員が協力して一つの授業を練り上げることにより、校区の授業づくりについての認識をより深め、日常の授業づくりにもつなげたいと考えた。8月〜10月にかけて3回の提案授業部会を実施し、そのたびにアドバイスをいかしながら変更したポイントを確認し、より子どもたちにつけたい力に迫る授業づくりを行ってきた。葛上准教授、幾田准教授、また高槻市教育センターの藤田卓也副主幹にも各部会で助言をいただいた。一つの授業に真剣に向き合うことの大切さ、また子どもたちの姿をイメージしてつけたい力に迫る問いや授業スタイルなどの授業設計を考える大切さを全体で確認することにもつながった。

提案授業部会コミュニケーションカードより

・ 校種、学校をこえて1つの指導案を仕上げていくと多様な意見が集まるし、授業を見るときにも視点がはっきりしてよいなと思いました。

・ 自分ごととして考えることを大切にして、一人ひとりが意見交流できたと思います。とにかく意見を出し合って話していくことが大切だと思いました。

・ 指導案をねっていく上で、同じメンバーで話しているとどうしてもいきづまってしまうと思いますが、3校で一緒に話ができることで新たに発見したり、あらためて考え直したりできるのはすごくいいと思います。

・ 数回にわたり授業の練り上げをすることで、より学習内容について深く考えることができました。また、他校の先生とも話をさせてもらう中で、共通するところや相違点もわかりました。

・ 提案授業部会での話し合いの中で、自分の中にはないような観点からの意見や考えを聞くことができ、すごく参考になることが多かったと思います。教科別での会議という形が有意義であったので、来年度以降も続けていければいいと思います。



2 生活科・総合的な学習の時間「いまとみらい」の取り組み

 生活科・総合的な学習の時間「いまとみらい」の学びを見つめ直したとき、先に述べた授業改善から改めて「いまとみらい」に返せるものや単元の広がりなどを確認した。それに加えて、つけたい力や適切な課題設定などを整理するために、新たに小中教科部会に「いまとみらい部会」を立ち上げた。また、単元開発においても小小間の連携を大切にしながら実施している。

(1)小中教科部会「いまとみらい部会」

 小中教科部会の「いまとみらい部会」では、「学校の温度計をあげよう」の単元において1年生から9年生までのねらいととりくみ概要の系統性を整理した。また「まちの温度計をあげよう」のテーマについて各学年の地域・施設・関係機関との関わりについての整理も行った。小小合同学年会で横の連携は意識してきたが、あらためて縦に系統性を整理すると、取り組みが重なっているところはないか、解決すべき課題が深まっているかなどを確認することができた。「いまとみらい部会」は、今後も取り組みを継承・発展させていくにあたり、大きな意味があると考えている。



(2)小小合同学年会
 「いまとみらい」では、1年生から9年生までを見通し、第四中学校区キャリア教育全体計画に基づきながら、系統的に各学年が単元を設定する。小学校の単元設定においては、小小合同学年会で話し合いながら、子どもの実態に応じて検討を重ねる。子どもたちの連携のためには互いの学校の子どもの実態を把握する必要があり、ていねいに単元の計画を立てることが求められる。子どもの一貫だけではなく、教職員も一貫していくことが大切であると考える。

2015年度 「いまとみらい単元一覧
 以下は、今年度の「いまとみらい」の単元一覧表である。今年度の単元を開発する際、子どもたちに適切なハードル設定をすること、よりリアリティを感じる課題設定とすること、中身や内容だけを踏襲するのではなく子どもの実態に合った取り組みにすることを大切にした。
 今年度の地域公開研究発表会では、6年生と9年生が「いまとみらい」を提案授業で実施する。6年生の「Step by Step〜未来へ〜」も9年生の「マイタウンミーティング」も毎年、大切に実施してきた単元である。だからこそ、子どもの実態を見つめ、今年度に合わせたチャレンジをしている。
 また、単元の広がりとして、8年生が、高槻市役所の住宅課より「落書きの絶えない倉庫の壁に元気の出る絵を描いてほしい」と依頼を受けて昨年度まで取り組んだ「H2Aプロジェクト」の例がある。2年がかりで高槻市役所の住宅課と協働して取り組んだこのプロジェクトをきっかけに、今年度もまた住宅課との新たな協働が生まれている。






3 小中一貫組織体制の充実と発展
 
 平成25年度に四中校区が高槻市より連携型小中一貫教育校区として承認を受けて以降、ゆめみらい学園ではこれまでの研究を土台にして、さらなる小中一貫の推進に努めている。
今年度の主な連携型小中一貫教育の取り組みは以下のとおりである。(1月以降の予定も含む)



※上記以外に、校区校長会議、一貫研事務局会議、特別支援連携会議、保幼小連携会議、小小合同学年会、小中連携会議、効果測定会議、各校校内研究授業などを実施している


(1)ゆめみらい塾

 ゆめみらい学園では、今年度「ゆめみらい塾」を立ち上げた。「ゆめみらい塾」の大きなテーマは「人権教育の継承」である。教職員の入れ替わりが多い中、また、若い世代が年々増えていく中で、長年校区が大切にしてきたこと、先輩が熱い想いをもって取り組んできたことを伝え、引き継いでいく場をつくりたいという思いが、立ち上げのきっかけである。多くの経験や取り組みをされてきた素晴らしい先輩がたくさんいることは、校区の大切な財産である。身近な先輩から学び、また校区の教職員とつながり、ともに新しい実践につながるエネルギーを生み出す場にしていきたいという願いを込めて、各校持ち回りで3回開催した。

 第1回目は、赤大路小学校の久保公子指導教諭に「子どもと子どもをつなぐ授業づくり」というテーマで話してもらった。担任として学んできたことや大事にしてきたことを中心に、“子どもとともにつくっている日々の授業を大切にしたい”との話に、一日の中で最も多くの時間をしめる「授業」に対する姿勢、教職員として必要なことを学ぶことができた。

 第2回目は、富田小学校の大宅隆子教諭に「わたしが出会ってきた子どもたち〜四中校区が大切にしてきたこと〜」というテーマで話してもらった。出会ってきた子どもたちの姿や変容を通し、校区が大切にしてきた人権学習・地域学習が、「いまとみらい」にしっかり受け継がれていることをさまざまな経験から語ってもらった。社会参画力という視点を大切にしながら、地域とともに子どもたちを支えていくことを学んだ。

 第3回目は、第四中学校の大垣典子指導教諭・藤本久留美指導養護教諭に「四中校区のいまとみらい」というテーマで話してもらった。「できないことを見すごすのではなく、できないことを一緒にどうするかを考えていく」「できない原因を責めるのではなく、できたことを大切にして、未来をみつめる」という、子どもたちを丸ごと受けとめて子どもたちの可能性を引き出していく姿勢を学ぶことができた。「小中連携は互いが見つめ合うのではなく、同じゴールを一緒に向いてくことが大事」という、校区が小中連携でこれからも大切にしたい視点を確認することができた。

 各校持ち回りで行ったことで、3校それぞれの講師から、その学校の歴史も踏まえた話を聞くことができた。今目の前にしている校区の子どもたちの課題解決や子どもたちへの寄り添い方など、校区でともにがんばる仲間と学び合うことができたことが大きな成果である。多くの教職員が入れ替わる中で、校区で培ってきたもの、大切にしてきたことを引き継いでいくためにも、この時にこのような場を持つことは、とても意義のあることである。校区の、そして子どもたちの未来につながる場がまた一つ増えたと感じている。


◆コミュニケーションカードより◆

・先生に出会えた子どもたちは本当に幸せだなと思いました。きっと、子どもたちにとってどんな自分でも受け止めてくれる、認めてくれる存在なんだと思います。大きな安心があるからこそ、学校が楽しくて、学ぼうと思えるんだと思います。学びのもとのもと″って大切だなと改めて思いました。私も自分が担任している子どもたちをしっかり受け止めて、認めてもらえるよう、まず自分自身が学び、成長したいと思いました。もっともっとスキルアップして、子どもたちに返していきたいです。

・たくさんの経験や出会いの中で学んだことをたくさん話していただき、本当にうれしかったです。その中で、子どもが勉強はイヤやけど「この先生がそんなに言うならしゃあないな」というふうに、先生との関係の中で生まれるヤル気、そのためにしっかりと先生と子どもがお互いを大切に思ってできる信頼関係というのが、今も校区の集団づくりをする上での根っこになっている。そのことの大切さをあらためて認識しました。明日からの実践に少しでも返していけるよう意識していきたい。

・“私が出会ってきた子どもたち”が今の“私”をつくっている…。グループ交流でとなりの先生がおっしゃったこと。私も今日のおはなしを聞いて、その思いを強くしました。またじっくり聞きたいです。

・子どもたちとつくる授業という言葉は、今の自分にとってズシンと重たい言葉です。子どもたちが楽しい!勉強してる!と思う授業にしないといけないなあと改めて思った場でした。    

・校区の歴史について知らないことが多い中で、自分が日々接している子どもたちがその中で生きていること、ついつい忘れて私の目線でしか考えられていないことが多いなと考えるきっかけになりました。一人ひとりを見守る視点、私たちの思いから取り組みを創りあげていくという視点は変わらないと感じました。子どもたちに対する温かい気もちと熱い想いが伝わり、胸が熱くなりました。

・幸せな時間でした。変わっていかなければいけないところ、今大切にしなければいけないこと、さまざま考えさせてもらいました。たくさんの人の熱い思いのこもったまち、校区とこれからも引き継いでいけるように、自分の力を活かしていきたいです。これからもがんばります!

・「当たり前」って一人ひとりにとってちがう。ちゃんとわかっているつもりですが、子どもたちと向き合う中でついつい自分の「当たり前」を押し付けていなかったかな…と自分をふり返るよい時間になりました。子どもたちの無限の可能性を信じ、それを引き出すサポートが少しでもできるように、これからも子どもたちとしっかり向き合っていきたいです。校区が大切にしてきた想いを大切に、取り組みを日々創っていきたいです。


(2)コミュニケーション力ステップ表

 ゆめみらい学園では、「あたたかい聴き方」「やさしい話し方」を身につけることをめざして、校区すべての教室に「聴く・話すステップ表」を掲示し言語活動の充実に取り組んできた。これまですべての学習の中で意識して取り組んできたことで、周りの人に向けての話し方や、自分の考えの伝え方などに子どもたちの成長を感じることができている。

 今年度、「相手の考えをさらにくわしく聴き、自分の考えをしっかり伝えるにはどうしたらよいのか」ということを、子どもたちが学習の中でさらに意識できるように、また教職員がより有効に活用できるように、「聴く・話すステップ表」の見直しを行った。これまでのステップ表の内容は学年の子どもたちに適したものとなっているか、改善したほうがよいところはないかなどを合同学年会などで話し合った。鳴門教育大学の幾田准教授・葛上准教授にもご助言をいただいた。

 そうして完成したのが、「コミュニケーション力ステップ表」である。これまでの「小1年」「小2・3年」「小4・5・6年」「中1・2・3年」の区切りから、小中一貫を意識し「1年」「2・3・4年」「5・6・7年」「8・9年」に変更した。ステップ表の中には、聴き方や話し方の態度(体の向きや声の大きさなど)に関することと、聴くとき・話すときに大切にしたい観点(比べながらや理由を述べるなど)に関することの二つの要素が含まれている。両面ともに大切にしていきたいことであるので、それらを含めて「あたたかい聴き方」から「聴き方 受けとめ方」に、「やさしい話し方」から「話し方 伝え方」にそれぞれ変え、「聴く・話すステップ表」から「コミュニケーション力ステップ表」に名称も変更した。また、2年生以上の「聴き方 受けとめ方」では、「聴いてどうするか」という点も加え、考え方が広がり、深まるようにコミュニケーションスキルの向上をめざした。

 こうして新しくなったステップ表は、高槻市の「地域と連携した特色ある学校づくり推進事業」を活用してプレートにし、各教室に掲示している。これを日々活用していくことで、さらなるコミュニケーション力の育成につなげていきたい。



(3)学びんぐWeek!

 平成25年度より、中学校のテスト期間に合わせて、3校で家庭学習推進週間「学びんぐWeek!」を実施している。校区の子どもたちには、家庭での学習時間や予習・復習する時間、家庭学習の内容などにまだまだ課題がみられる。今年度、「家庭学習リーフレットPart2」を作成し、年度初めの家庭訪問で各家庭に直接配布した。教科ごとに家庭学習での取り組みのヒントを掲載し、各家庭での声かけなどの支援もお願いした。また、「学びんぐWeek!」期間には、「学びんぐシート」を活用して、子どもたちが自分で計画を立てて学習したり、自分の課題に気づいて進んで取り組んだりすることで、学習習慣の定着を図っている。自ら取り組む家庭学習の充実は、校区のめざす「主体的な学び」を引き出すうえで欠かせないと考える。また、日々の積み重ねが、基礎基本の定着にもつながる。

 「学びんぐWeek!」の取り組みも3年目となり、子どもたちが取り組む内容にも、広がりがみられる。どんなことを学習したかお互いに交流したり、工夫したノートなどを紹介したりすることで、「何をしたらいいかわからない」という声も減り、自学自習力の向上につながっている。「そろそろテストやから、これまで習ったことをまとめてみた」「○○が苦手やからがんばったら、ちょっとわかるようになった」など、子どもたちからも、前向きな声が多く聞かれるようになっている。保護者からも「ふだんは声をかけてもなかなか動かないのに、この期間には、自分から進んで勉強しています」「机に向かう時間が少し増えました」という声もいただいている。今後も取り組みを継続し、充実した家庭学習につなげていきたい。


(4)ゆめみらい学園 児童生徒議会

 今年で3年目となった、ゆめみらい学園児童生徒議会。各校の児童会・生徒会の子どもたちが集まり、学校・校区の温度計を上げる取り組みを考えて進めていく場となっている。今年度も自分たちでどんなことに取り組みたいかを考えることからスタートした。今年度の主な取り組みは以下の通りである。

ゆめみらい学園の旗・のぼりの作製

 これまでに、学園名、校区の歌、校区のキャラクターなど、様々なものをつくり出してきた。どれも、3校の子どもたちだけでなく、保護者や地域の方にも認識され、愛されている。そんな中、今年度は校区の旗とのぼりをつくろうということになった。校区の子ども・保護者・地域の方から、デザイン案を募集した。たくさん集まったデザイン案をもとに、「校区のつながりが伝わるデザインにしよう」「たくさんの人の思いのこもったデザインにしよう」という気持ちを大切にして児童生徒議会で話し合った。その結果、なじみのある3校のキャラクターを入れること、3校が明るくつながるイメージで大きな虹をかけることが決まった。その後、ゆめみらい学園の新たなシンボルとなる旗とのぼりが完成し、「これから児童生徒議会の活動だけでなく、各校のいろいろな活動で旗とのぼりを使用し、校区のつながりをアピールしていきたい」と子どもたちからも前向きな言葉が聞かれた。

 


ゆめみらい学園クリーン大作戦

 昨年度の児童生徒議会での話し合いをもとに取り組んだ『ゆめみらい学園クリーン大作戦』。自分たちの住むまちを、自分たちできれいにしていこうという思いから、昨年度は前期・後期各1回ずつ行った。今年度の児童生徒議会でも「クリーン大作戦は続けていきたい」という声が子どもたちからあがった。まちをきれいにするのはもちろんだが、この取り組みを通じて校区の交流をさらに深めたい、地域の人にも喜んでもらいたいという思いが子どもたちから出された。この日に向けて、各校で腕章やたすきを作り、第四中学校に集まった。

 まずは、完成した旗とのぼりの除幕式を行った。自分たちで話し合いを進めて決まったデザインが形になったことに、子どもたちからは喜びの声があがった。さっそくのぼりを持って、第四中学校をスタートし、摂津富田駅へ向かった。予想以上のゴミの多さに驚き、思いもよらないゴミなども発見し、用意したごみ袋はどんどんふくらんでいった。その後は、各校ごとに分かれ、それぞれの学校に戻るルートの中でゴミ拾いを行った。まちの方からも声をかけていただき、子どもたちにとっても充実した活動となった。

ゆめみらい学園新聞
 今年度新しく取り組んだのが『ゆめみらい学園校区新聞』である。「各校の様子をもっと知りたい」という子どもたちから出されたアイデアを形にした。3校それぞれの日常の様子を記事にして一枚の新聞を作成し、校区の子どもたち全員に配布した。子どもたちの積極的な思いから、3校のつながりがまた一つ形になった。

◆児童生徒議会ふり返りカードより◆

・3校全体の新聞を作ることになって、さらに3校の距離が縮まると思った。「旗」と「のぼり」を作ることになって、どんなものができるか楽しみ。

・1回目だったので、たくさんのことが決まった。難しいこともあったけど、まとまってよかった。次はいろいろなことに取り組む番やから、積極的に進めていく。

・3校で話し合いができて、色んなことが決まったからよかった。新聞を作る!提案が決定してうれしかった。旗とのぼりを作るのがすごいと思う!決まったことは一生懸命がんばりたい。

・児童生徒議会というこの3校の代表が集まって話をするのはとてもいいことだと思った。今後、年6回、8回・・・と言う風に増やしていければいいと思う。

・会長さんが最後までしっかりしきってくれたので、生徒議会がスムーズに進んだので、しっかりうなずいて聴くことができました。意見をまとめるときにやりやすかったです。


(5)ゆめみらい学園 特別講演会

 本年4月、校区の夢であった校区の本が発刊された。これまでの取り組みのすべてがつまった『ゼロからはじめる小中一貫キャリア教育』である。この本の監修者であり、校区が文部科学省の研究開発学校として無我夢中で取り組んでいた時に、たくさんのご指導をいただいた前文部科学省調査官の藤田晃之氏(現 筑波大学教授)を校区にお招きし、7月22日に校区本刊行記念特別講演会を開催した。ゆめみらい学園の教職員だけでなく市内の他校の教職員や保護者・地域の方など、多くの参会者を迎えての開催となった。


 藤田教授から、「ゆめみらい学園におけるキャリア教育の特質とその意義」と題してお話しいただいた。「いまとみらい科」の開発と実践について、子どもたちの実態に根差した取り組みであること、教育活動全体を通したキャリア教育のモデルとなりうること、社会参画力の育成をめざし、子どもたちにとっての“リアリティ”を追求していることなどの魅力を語っていただいた。国がキャリア教育を通じて育成すると提言している、多様な他者の考えを理解し自分の考えを正確に伝え、他者と協働し社会に参画する「人間関係形成・社会形成能力」や、様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立てて、その課題を処理・解決する「課題対応能力」などは、まさにゆめみらい学園で大切にしている社会参画力であり、「自ら問いを立てて解く力」であることもお伝えいただいた。校区が進めてきた研究を今一度価値づけしていただいたことで、子どもたちが社会を生き抜く力を育成するために、今後も家庭・地域と連携して取り組んでいこうという思いを共有することができた。

 講演会には2人の卒業生がゲストで登場した。1人は、8年生で取り組んだ「H2Aプロジェクト」や生徒会長としての取り組みを通じ、一生懸命に自分たちで考え活動することに喜びや充実感を感じられるようになったこと、自分が本当にしたいことのために高校生活の中でも努力を続けていることなど、今頑張っていることや自身の成長を語ってくれた。

以下に、もう1人の卒業生のスピーチを紹介する。

高校生となり、今、中学校生活をふり返って思うことは、多様な面で本当に貴重な経験をさせてもらうことができたということです。
(中略)
 学校生活においては、いまとみらい科の学習がとても印象に残っています。調べ学習、演劇、地域の願いを叶えるための活動、そして最後には全国からたくさんの方々が来られている中でフォーラムをするなど、本当に様々な活動をしてきました。それらの活動全体を通して、私たちは周りの人々や地域について知ることができたと思います。地域の方々に直接お話を伺うこともでき、時には地域のお祭りに参加してお手伝いなどもしました。地域の方々との交流はとても多かったように思います。そうした中で、みんなで協力して物事を進めていく姿勢や自分で調べてまとめる力など、大切なスキルを身につけることもできたと思います。学年が上がるごとに活動内容は変わっていきましたが、みんなが活動に取り組む姿勢や物事に対応する力は確実に成長していきました。その成果は、みんなで話し合い、協力して実現した「冷水機の設置」というものにあらわれていると思います。これらの活動を通してしか得ることができなかったものも多くあり、私自身、活動の中で本当に成長できたと思っています。
 しかし、中学校生活の中ですべてがうまくいったわけではありません。それでも、何度つまずいでも、自分で考え、仲間と支え合い、立ち上がることができました。(中略)ともに中学校で成長した仲間が、わたしを励ましてくれ、少しずつ前を向けるようになりました。また、この時の経験をもとに高校生活を送る中で、結果だけが大切なのではなく、目標へ向かうまでの過程や、その時に得たものが将来を考えれば大切であると気付けるようになりました。日々の勉強において、自分で計画し、実際に行動した後にそれを復習、吟味するといったサイクルが必要不可欠であると実感しています。イベントなどでも、高校では何事も先生の力に頼らず生徒たちで計画し、進めていくというスタイルが基本です。四中では、いまとみらい科の活動の中でこの自主的なサイクルが徹底されていたように思います。また、高校でグループ活動をする際には、中学校時代に経験したことをもとに、周りのメンバーと協力しながら自分がグループに貢献できています。このように、中学校で学んだことが、今の自分の中でいかされていることが多くあることを実感しています。
 日々の勉強の中でも、しっかり計画を立て、自分なりの地道な努力を続けてきたので、現在自分の成績に自信を持つことができています。そうして努力を続けてきたことで、一つ大きなものを手に入れることができました。それは、英語が好きになり、得意になったことです。今ではそれを得意教科というだけではなく、将来につなげていきたいと考えています。そのおかげで、なかなか先の見えなかった自分の将来について、より具体的に考えられるようになり、自分の力をいかせる道に進みたいと思うようになりました。四中校区での様々な学習を通して学んだり得たりしたことは、確実に今のわたしの力になっていると感じています。まだまだ不足している部分はありますが、しっかり自分と向き合い、これからも学び続けたいと思います。

 卒業生が、ゆめみらい学園での日々をふり返り、そこでの活動や手にした力についていきいきと語る姿に、教職員だけでなく保護者・地域の方々にも感動が広がった。教育の成果は、卒業生の姿にこそある。どんな環境の中にあっても、人とつながり、自分の力を発揮し、目の前の課題に力強く取り組みながら進んでいく人であってほしいと願っている。そんな子どもたちの未来のために、ゆめみらい学園では今後も取り組みを続けいく。



 
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