第1章
研究の継承と発展    A




2)「学びの空洞化」を埋める

研究を創造するには,今の子どもたちと子どもたちを取り巻く社会がどうなっているのか分析することから始める必要があった。子どもたちを取り巻く社会は大人でも先を見通すのが困難で何が起きるかわからないものであり,急速に多様化,国際化,複雑化が進んでいる。文部科学省第2期教育振興基本計画においては,「社会を生き抜く力の養成」が掲げられ,「個人や社会の多様性を尊重しつつ,幅広い知識と柔軟な思考力に基づき,主体的に課題を解決したり,他者とコミュニケーションし,協働したりしていく能力等が必要」とされている。
また,明治大学教授の諸富祥彦は,『答えなき時代を生き抜く子どもの育成』(上智大学教授奈須正裕との共著 図書文化 2011)の「まえがき」の中で,このように論じている。

 子どもたちの生活も「答えなき問い」に取り囲まれている。
 「最近,ちょっかいを出してくる,あの子とどう仲よくしていけばいいのか」
 「お母さんとお父さんの仲が悪そうだ。私は,どうすればいいんだろう……」
 「答えなき問い」――それは,もちろん,こうした個人レベルのことに限られない。社会や世界全体が,「答えなき問い」で満ちている。         (2頁)

そして,子どもの内側でふと生まれた「答えなき問い」を拾い上げ,子どもたちと一緒に考え続けることが,

 「答えなき問い」を,「他人事」としてではなく,「自分自身ののっぴきならない問い」として引き受けることのできる子どもたちを育てていく。それがひいては,地域を変え,社会を変え,世界を変えていくことにつながっていくのだ。(4頁)

と論じている。

しかし,校区の子どもたちの現実は,こうした求められる力と違う面があった。
ここにいまとみらい科の開発にこめた願いがある。いまとみらい科は「答えなき問い」をどう自分事として引き受けることができるか,自分に何ができるのか考える学習である。いまとみらい科には,自分と自分の周りの今と未来を主体的に創る子どもであってほしい,自分と自分の周りの「答えなき問い」を考え続ける子どもであってほしいとの願いがこめられている。



【子どもたちの実態】
*人間関係をうまく築けずに傷ついたり,傷つけたりしている。
*急速に進む情報化社会の中で,情報に翻弄されている。
*学校で学んだことを自分の生活に生かしきれず,学ぶ意味を見いだせずにいる。
*困難に出会ったとき最後までやり抜くことが苦手である。
*長引く不況などの厳しい社会状況の中,自分の将来を展望しきれずにいる。
*自分をとりまく社会で起きていることに対して,働きかける方法を十分に習得できていない。

*学んだことや経験を根拠にして,自分で判断し,じりつ(自律・自立)して生きていくことが苦手である。





【学びの空洞化】
T 内容のずれ(知識・技能)
学校での学習が,子どもたちにとって学ぶ必然性を感じられる内容となっていない。
U 学び方のずれ(思考・判断・表現)
学習方法が効果的なものとなっていない。
V 気持ちのずれ(関心・意欲・態度)
自分に自信がもてず,学ぶ意欲が低下しており,学習に主体的に取り組もうとする態度が十分に育っていない。

子どもたちの実態から,子どもたちと「学校での学び」の間に「内容」「学び方」「気持ち」の3つのずれが生じているのではないかと考え,『学びの空洞化』と名付けた。「学びの空洞」を埋め,諸富氏の言う「答えなき問いを自分自身ののっぴきならない問いとして引き受ける子どもを育てる」ことが,校区の子どもたちの「生きる力」を育むことにつながると考えた。
「学びの空洞」を埋めるためには,どうしたらよいのか,子どもたちの課題を前に,育みたい力を校区で考え整理したのが下記の4つの力である。そして,研究を進める中で「じりつする力とは具体的にはどのような子どもの姿をいうのだろう」などの話し合いを重ね,見つけたキーワードが「社会参画力」である。



校区で育みたい4つの力〜子どもたちの現状から〜


 @ じりつする力
   ・・・自分で判断しながら自分の立ち位置を見つめる力
 A 考える力
   ・・・課題解決に向けて必要な情報を整理・活用する力
 B 見通す力
   ・・・見通しをもって課題に取り組む力
 C つながる力
   ・・・人や社会とつながりつづける力



校区が考える社会参画力




 
@ 矛盾や困難を乗り越え,じりつ(自律・自立)して生きていく力

 A 社会の中から課題をとらえ解決する力

 B人や社会に働きかける力



 
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