第3章
組織体制の改善




1 小中一貫を見通したさらなる体制化
  〜小中一貫で進める授業改善〜


2)一貫体制組織体制の確立

小中教科のS会議(小中指導案検討会)

  

写真のように小小中3校の職員が9つの教科に分かれてその教科の9年間のつながりや,学ぶ意味,小中連携を進める上で気になっていることなどを話し合う会議である。今年度は国語,社会,算数・数学,理科,音楽,図工・美術,体育,家庭・技術,外国語の部会を立ち上げ,3回の会議をおこなった。
 その中で「なぜ国語を学ぶのか?」とまっすぐ向き合うために,学習指導要領と私たちの願いと子どもを子どもを結ぶ教科の「S」を考えた。小中のメンバーでこの教科でつけたい力はなんだろう?学ぶ意味は何だろう?とKJ法をしたり,話し合ったりする中で,現時点の「教科のS」をつくることができた。
多くの教科で小学校側から,「中学校の先生の専門性や教科に対するプライドに刺激を受けた」との声が聞かれた。また,小中教科指導案検討会では,中学校側から「小学校のていねいな手立てに学ばせてもらった」との声が聞かれた。
小学校と中学校ではシステムが違う。互いに強さと弱さがある。だからこそよさを活かし合い,力を合わせられると心強い。今回立ちあげた小中教科のS会議は授業改善,そして校区の教育力をあげることにつながると感じている。



教科のS イメージ




 




校区が考える教科のS(学ぶ意味)

教科のSを考えるために小中教科のS会議で論議していくと,教科に共通する部分が明らかになってきた。各教科においてそれぞれ習得すべき内容は異なるが,それをなぜ学ぶのか,どのようにして学ぶのか,という部分は共通することに気づいた。それを整理すると次のようになった。教科のSは,この「教科のよさの3段階」で構成した。

教科のよさの
 第1段階   習得 「すばらしいな」         なぜわくわくするのか知る
 第2段階   活用 「やってみたいな」        わくわくを試してみる
 第3段階   探究・継続・日常化「広げてみたいな」  わくわくを広げる

国語
・ 気持ちや考えを伝え,理解するために言葉を学ぶ教科
・ 気持ちや考えを適切な言葉を使い,わかりやすく表現できる
・ 日常生活の中で,言葉を大切に使う

社会
・ 国土や過去から学び,今の社会のしくみを考える教科
・ よりよい未来の社会を作ろうとする
・ 社会の一員として生きようとする

算数・数学
・ 数や図を使って表現したり処理したりする方法を学ぶ教科
・ 見通しをもって筋道を立てて考えたり,説明したりする
・ 算数・数学で学んだことや考え方を生活の中で活かしていく

理科
・自然や身の周りのできごとがどのようなしくみで起きているのかを学ぶ教科
・観察や実験を通して自然や身の周りのできごとを調べられる
・自然や身の周りのできごとの不思議やおもしろさに関心を持ち続ける

音楽
・音楽の楽しさや美しさを感じとる力をつける教科
・音楽の楽しさや美しさを表現できる
・音楽によって人生を楽しく豊かにする

保健体育
・ 運動文化を知り,体を動かすよさを実感する教科
・ 役割を考え,責任をもって仲間と協力できる
・ 生涯にわたって健康に気を付け運動を楽しむ

図画工作・美術
・ 創ったり描いたり観たりする力をつける教科
・ 自分なりの美しさやこだわりを表現できる
・ 身の周りのものに美しさや価値を見いだしつづけようとする

技術・家庭
・ ものづくりの達成感を味わい,家庭生活の大切さを学ぶ教科
・ 生きていくために必要な力を身につける
・ 工夫して未来の生活をよりよくしようとする

外国語
・ 外国語を通して,言葉や文化について学ぶ教科
・ 外国語を通して,いろいろな国の人に自分の考えを伝えられる
・ より多くの人とつながるためにコミュニケーションをとろうとする




「小中教科のS会議」エピソード紹介


教科

エピソード

国語 

国語では,すべての教科の基本として,1年生から9年生までていねいに正しく読み取る力,話す力,聴く力を系統立ててつけていく必要性があるという話になった。
小中指導案検討会では,「子どもを引き付ける小学校の丁寧な授業展開を参考にしたい」,「中学の教材研究の深さや,つけたい力が明確であることが刺激となった」との声が聞かれ,小中のメンバーが共に授業づくりをしていくことの大切さを感じた。
Sには,国語は人とのよりよいつながりを築く力を育み,生きていくうえで大切な教科であることに出会ってほしいという願いを込めた。

社会 

なぜ社会を学ぶのか小中のメンバーで話し合ったことをキーワードにすると,「情報」「地域」「経済」「リアリティ」「世界」「公民的資質」とそれらをつむいでつくる「未来」である。 指導案検討会では,子どもにとって何がリアリティなのか,歴史学習と地理学習を踏まえて,自分の生活に返せるようにするにはどのような授業がよいのか議論になった。
Sには,先人の失敗と知恵に学びながら,今を読み解き,未来のあり方を考える。そんな社会科の授業でありたいとの願いを込めた。

算数・数学

算数・数学科では,試行錯誤しながら取り組む先に「わかった!」「解けた!」という爽快感が一番ある教科だという話になった。
小中指導案検討会で,日常とつないで算数・数学を学ぶ意義を考える中で,「面積を学ぶ意味は何なのか自分に迷いがある」との悩みが小学校から出された。中学からはそれらを全部考えていたら前に進まないという話も出たが,大きな刺激を受けることとなった。
Sには,算数・数学の解き方や考え方を学ぶ中で,見通しをもって論理的に物事を考える力や物事を解き明かすことの楽しさを味わえる教科でありたいとの願いと算数・数学で学んだことや考え方を生活に活かしていってほしいとの願いを込めた。

理科

理科を学ぶ意義を話し合う中で盛り上がったのは,世の中の不変を学ぶ理科には「ロマンがある」である。
指導案検討会では,子どもにとってリアリティある日常の事象を科学的思考で解いていくことができないか考え,「この町は雨の前にチョコレートのにおいがするという都市伝説を究明する」という授業を考えた。小学校からは中学の教科に対する専門性に刺激を受けたという声が出た。また,実験を行った上で新たなSと出会うという授業も考え「もののとけ方」と「物質の状態とその変化」の授業を考えた。

Sには,身近なことや目の前の現象から問題を見つけ,「なぜそうなるのか」仮説を立てて解いていくおもしろさを感じる理科でありたいとの願いを込めた。

音楽

音楽には言葉ではないもので伝え合うことができる世界共通の文化的価値があるという話になった。音楽科はさまざまな音楽との出会いを通して音楽を聴いたり,演奏したりしながら心を育て,人生を豊かにできる教科だと考えている。子どもたちの生活には,音楽があふれている。 Sには,生涯を通じて音楽に出会い続けてほしい,自分とみんなの力で音楽を作り出す喜びを感じてほしいとの願いを込めた。

図工・美術 

 図工・美術部会で出されたキーワードは「感動」であり,図工・美術は,様々な作品のよさや美しさに出会い,自分なりに感じた「感動」を自分らしく表現すること,また自分がよいと思ったこと,表現したいことを創造する教科だと考える。9年間で,いかに鑑賞,表現の技術を積み重ね,「感動」に出会っていくのかその難しさも話し合った。
Sには,美術を通して生涯に渡り日常を豊かにしていく喜びを感じ続けてほしいとの願いを込めた。

保健・体育

 体育では,運動することの楽しさと心が元気になることはつながっているという話になった。体をつくること,何かの技術習得のために粘り強く努力することは体づくりであり,心づくりでもある。それは生きることそのものである。自分と周りの人の体を大切にすること,仲間と協力することの大切さを感じるなど,多くのことが学べる教科だと考える。
 Sには,人の歴史の中でスポーツが果たしてきた価値を知り,生涯にわたって頭と体を動かして活動する喜びを感じられる人になってほしいという願いを込めた。

技術・家庭

技術家庭では,生活に必要なこと,つまり人として生きていくために必要な力を身に付ける教科であるという話になった。衣・食・住,家族にかかわり,生活に直接つながっている教科である。中学校から2つの小学校での実習などの内容がそろっていれば指導を引き継ぎやすいとの意見が出され,教科における小小連携の大切さを感じた。
校区の子ども達の実態を考えながら「S」を考えた。実習を通して達成感を味わえるのは技術家庭の魅力である。料理やお金の使い方などを含め「一人暮らしができる力をつけてほしい」との願いを込めた。





英語では小学校の外国語活動と中学校の英語をつなぐことの大切さと難しさについて話し合った。小学校は体験を重視した活動で,中学で「書く」活動が出てきたときにつまずく子が多く,その後の学力にも大きな影響を及ぼしているとの話が中学から出され,小学校の外国語活動のあり方や,7年生初期の英語授業のあり方に改善が必要であることを小中で共有することができた。Sには,さまざまな国や文化にふれることで多様な価値観を知り,コミュニケーション力や考えを広げることができる教科,つまり世界を広げる教科でありたいという願いを込めた。

小中教科のS会議を通して,「あらためて教科について小中のメンバーで考えることはおもしろかった」「難しいけれど,もっといいものとしていきたい」「次は具体の授業づくりをしてみたいと思っている」などの声が聞かれている。今回考えた教科のSはあくまで現時点のものである。常に検証しながら,よりよい「教科のS」にしていきたいと考えている。




子どもたちには
教科を学ぶことはすばらしいこと
教科を学ぶことはわくわくするということを知ってほしい
「先生,何がすばらしいの?」
「どうわくわくするの?」
そんな声にこたえる授業をつくりたい
「わくわくどきどきをしかける授業」とは何か
「なぜ教科を学ぶのか」
「人はなぜ学ぶのか」
問い続ける校区でありたい




教科のSの基盤は,なぜ学ぶのか=「学びのS」である。このことを校区で共通理解してどの授業においても子どもたちが主体的に学ぶことができるようにこれからも問い続けたい。


 
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